「USO」シリーズ第4弾! シリーズ最厚・大ボリュームでお届けします。
「あなたの嘘を教えてください」をテーマに、漫画家、文筆家などさまざまな人がとっておきの嘘を書き下ろします。
今回の特集は「YES・イエス ・肯定」。自己肯定感と嘘についてご執筆いただいています。
目次ーーーーーーーーーーーーーーーー
<特集:YES・イエス・肯定>
『今日も吉祥寺のルノアールで』野口理恵
『あめん』若林 恵
『きのうの私は「はい」と言った』石山さやか
『夜の散歩』今日マチ子
『ビールもう一本!』辻山良雄
『すべてがウソになる』年吉聡太
『それが答えだ』岡藤真依
『メガネと金髪と京都』矢代真也
『わたくしがYES』少年アヤ
<USO・うそ・嘘>
『ストーリーテラー』佐久間裕美子
『ささやかな復讐』DJまほうつかい(西島大介)
『じいちゃんの死』早坂大輔
『再会する時間』大横山飴
『私と嘘』旦 悠輔
特別寄稿 西川勇大
特別寄稿 妹尾龍都
特別寄稿 nene
前書きーーーーーーーーーーーーーーーー
USO うそ 嘘
「あなたの嘘を教えてください」 このテーマで二〇一九年にはじめたこの本には たくさんの嘘が載っています。 心の奥にしまいこんだ気持ちを引っ張り出して文章にすると、 抱えてきたものがいつの間にか一人歩きをして、 今度は知らない誰かの気持ちを引っ張り出します。 そんなことの連続で四号目までやってきました。
お気づきだと思いますが、「嘘を教えてください」というのは嘘で 「本当のあなたを教えてください」というのが本当です。
あなたはどんな気持ちで嘘をつくのですか。
嘘をついてしまったあなたはどんな気持ちになりますか。
深く後悔しますか。 それとも、してやったり、ですか。
あなたはどんな人なのですか。 私はあなたのことが知りたいです。 あなたがどんな人なのか、ものすごく知りたいです。上っ面で笑い合うのではなくて、 空虚なSNSで友達申請をするのではなくて、 あなたの心の中にある柔らかい部分に触れたいのです。
どんなことで笑いますか。
どんなことが悲しいですか。
どんなことで傷つき、
どんなことで幸せな気持ちになりますか。
私はむきだしのあなたが知りたいのです。 だからあなたの嘘を私に教えてくれませんか。
特集YESよりーーーーーーーーーーーーーーーー
「愛してる?」と聞かれたときにどうしても口ごもってしまったりします。「YES」ということばがどうしてもうまく出てこないのです。「YES」ということばがとてつもなく危険なことばに思えて、怖さが喉の奥からせりあがってきて、口がからからに乾いてしまいます。そのときあなたは必死でガードを固めようとしているに違いありません。なんとか自分を手放さずに済むよう、自分というものに必死にそれにしがみついているのです。
自分というものの一体何がそんなに大事なのか、と頭で考えることは簡単です。けれども、いざそれを手放せと言われたら、やはり、どうしたって、怖気づいてしまいます。そういう自分がダサいなと思ったりもします。そう思いながらも、「YES」ということばが、いつまで経っても怖いままなのです。(若林恵「あめん」より)